1 誹謗中傷などの書き込み、投稿をした本人を特定したい
ウェブサイト管理者に対するIPアドレス等の通信履歴ログの開示請求(任意の請求もしくは発信者情報開示仮処分)→プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟
インターネット上の誹謗中傷等の書き込み、投稿により被害を受けた時、書き込みをした人物(発信者)を特定するためには、書き込みをした通信のIPアドレス等の通信履歴ログの開示を受けたうえでのプロバイダに対する発信者情報開示請求の手続が必要です。
発信者情報とは、プロバイダに登録されている住所、氏名、電話番号、メールアドレス等の情報をいいます。
誹謗中傷等の書き込み、投稿は、インターネット回線を利用して匿名掲示板やブログ、口コミサイト等に対して行われています。
そこでまず、誹謗中傷書き込み、投稿の被害者は、発信者がどの回線を利用して書き込みをしたのかを特定するため、書き込み、投稿がなされたウェブサイトの管理者に対し、問題の書き込み、投稿がなされた通信のIPアドレス等の通信履歴ログの開示を求めることが必要です。
問題の書き込み、投稿がなされたIPアドレス等の通信履歴ログが特定できれば、発信者が利用した回線のプロバイダが分かります。
次に、プロバイダに対して発信者が利用した回線の利用者情報(発信者情報)を開示してもらうための請求を行うことが必要です。この請求を、発信者情報開示請求といいます(プロバイダ責任制限法第4条)。
発信者情報開示請求は、裁判手続によらずとも可能な手続です(裁判外での請求を、「任意請求」といいます)。
しかし、実務上は任意請求の形ではプロバイダが開示に応じないことが一般的です。
そのため、発信者情報開示請求にあたっては、裁判手続によることがほぼ必須といえます。
2 IPアドレス、タイムスタンプ等 通信履歴ログ特定の流れ
誹謗中傷等の書き込み、投稿がなされたウェブサイトの管理者に対し、発信者情報の開示を求めます。
問題の書き込み、投稿を行った通信の、
IPアドレス
携帯端末のインターネット接続サービスの利用者識別番号
SIMカードの識別番号
タイムスタンプ
ポート番号
といった発信者情報(通信履歴ログ)の開示を請求します。
任意の開示に応じてもらえなかった場合には、裁判所への発信者情報開示の仮処分を申立てます。
仮処分は裁判所を利用した手続であり、一般的には裁判管轄は東京地方裁判所です。
仮処分の際には、保証金の供託が必要となります(事件終了後に通常は返還されます。10ー30万円程度 事案による)。
被害者が自力で裁判対応を行うことは大きな負担を伴います。
代理人弁護士の利用をご検討ください。
開示に成功した場合、プロバイダへの発信者情報開示請求の手続に進みます。
リンク:発信者情報開示請求の詳しい手続
3 発信者情報開示請求の詳しい手続
IPアドレス等の通信履歴ログが特定できたら、whois検索により発信者が利用していたプロバイダが分かります。
そのプロバイダに対して、発信者の氏名、住所等の発信者情報の開示を求めるのが、発信者特定のための次のステップです。
発信者情報開示請求は、実務上は裁判手続によることがほぼ必須となっており、被害者が自力で裁判対応を行うことは大きな負担を伴います。
代理人弁護士の利用をご検討ください。
①任意請求
裁判外でプロバイダに対し、所定の書式を用いて発信者情報の開示を求める手続です。裁判所に出向かず郵送で手続が行えますが、この方法で開示をしてもらえるケースはまれです。
なお、この手続内で発信者に対するプロバイダの意見聴取が行われます(情報を開示してもよいか?を尋ねます)。このことで発信者が警戒し、以後の誹謗中傷書き込みを控えるという抑止効果が期待できます。
②発信者情報開示請求訴訟
いわゆる裁判手続です。
管轄は原則としてプロバイダの所在地である東京地方裁判所となるケースが多いでしょう。
判決まで6カ月程度を要することが一般的です。
③発信者情報消去禁止の仮処分命令申立
②の訴訟によって発信者情報の開示を求めていくわけですが、半年以上に及ぶ訴訟手続の間に、プロバイダが発信者情報を消去してしまう危険性があります。
発信者情報の消去を防止するため、プロバイダに対するアクセスログの保存を命じる発信者情報消去禁止の仮処分命令を申立てた方が良いケースもあります。
管轄は通常は東京地方裁判所となります。
また、仮処分にあたって保証金の供託が必要となります(事件終了後に通常は返還されます。10ー30万円程度 事案による)。
4 発信者が特定できたら 被害の回復
誹謗中傷等の書き込みの発信者が特定できた場合、被害者としては発信者に対する法的責任の追求を行うことができます。
不法行為に基づく損害賠償請求、慰謝料請求
書き込み、投稿、記事の削除の請求
刑事責任の追及 刑事告訴
この際、弁護士を代理人とした内容証明郵便の送付からの慰謝料等請求交渉や、慰謝料等請求の訴訟といった手続を取ることができます。
また、刑事告訴をお考えの場合は告訴状を弁護士が作成する等のサポートが可能です。